No.1223: 世界の終わりと海辺のカフカ
月別表示: 2009年02月の記事 カテゴリー: 読書遍歴
2009年02月04日の日記の概要
海辺のカフカを読み終えたので、それに関連しつつ、最近考えていたことを色々と書きました。長文は投稿前に消えると怖いのでいつもドキドキしています。
.海辺のカフカを読みました
村上春樹の「海辺のカフカ」を読み終えました。
上下2巻なので、わりと読みごたえのある長さでした。
買ったのは昨年11月で、上巻は1月上旬、下巻は2月に入ってようやく読み終わりました。
文体は平易で、内容はそれなりに訳が分からなくなるもやもや感が細部にあって、それでいて物語の全貌をつかむのは容易。
構成について
奇数章と偶数章で二つの物語が展開していき、半分ぐらいのところで関連性が明らかになり、後半でようやくクロスするという以前に読んだ、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」の構成に近いものを感じました。今のところ、この2作品しか村上春樹の小説を読んでいないので、彼の作品全てに当てはまる特徴なのか、この2つに関連だけ特別に深い類似性があるのかは定かではありませんが、よく似ていますね。
作品の印象について
「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」と構成が似ていると書きましたが、似ているのは構成だけではありませんでした。森、影、静かに閉じた世界、僕と少女、記憶と図書館といった、「世界の終り」の世界を記述するための用語が登場し、物語の後半では実際に「世界の終り」と言っても良い「世界」が登場します。
「世界の終り」のような世界が好きなので、嬉しかったですね。
「世界の終り」と「CLANNADの『幻想世界』」
「世界の終り」は、綺麗で静止していて、殺伐とした世界そのものの雰囲気や、その世界にやってきた「僕」がその世界で出会った少女に恋をして、少女を連れて世界から脱出しようとするという物語も好きです。
KeyのCLANNADに登場する「幻想世界」も、同様の理由で好きです。CLANNADを初めてやっているときは、どこかとっつきにくい世界に見えたし、作り手は結局なにが言いたかったのか、何の為に「幻想世界」が用意されたのか、今ほどは分かりませんでした。でも、麻枝准さんがICO(イコ)を絶賛していたのをKeyらじで聴いて、影響されやすい私は迷い泣くICOを買って、震えるコントローラーごしにヨルダ(主人公のイコが連れ出そうとする謎の少女)の存在を感じ、連れて歩き回っているうちに、いろいろと見えなかった物事が、すこしだけ見えるようになってきました。
過去にいろんな人が指摘しているだろうし、半ば常識になっていることだと思いますが、Keyは、というか麻枝さんと都乃河さんは確実に、村上春樹作品の影響を受けているはずです。
「後発の物語」は「先発の物語」の影響を受けていて良いと思います。
いくらでも影響を受けて良くて、何かを受け入れればいいし、或いは反発すればいいと思います。
「だから、誰の作品に触れてどう感じたとか、最近はまっている食べ物のような些細なインタビューでも、その作品を考察するときには重要になってきますよね」という話を最近ずっと書きたかったのです。Twitterなんかではよく呟いていましたが、ようやくブログの記事という形に出来そうです。
クリエイターが尊敬するクリエイター
作品の魅力を隅々まで味わうには、作者の思想、嗜好を知ることが時に重要になると思います。
作者によっては、作品だけで評価して欲しいと思う人もいるでしょうけど、実際にはそれが困難なことも多い。
また、似ているからパクリっていう短絡的な思考も問題です。すぐに酷似している、パクリだという人は、自分の観測範囲の狭さを恥じるべきです。
多くの場合は「尊敬」とか「感動」というポジティブな感情が前提にある「模倣」であって、そこに悪意はないんですよ。まぁ、明らかに分かるのに「そんな人(作品)は知らない」とか言い出したら鬱陶しいですけどね。
長々と書いてきましたが、書きたかったことは「なんか分からない作品」に出会った場合は、その作者が影響を受けた環境を探ると、ヒントが散らばっていました、ということです。
その環境の中には音楽や小説、社会情勢なんかが全て含まれると思います。
そうやって、どんどんさかのぼって行くのも面白そうですよね。
最新の何かとか、話題の何かとか、時事的な何かを積み重ねたり、次回作を期待したりするのも良いですけど、どんどん源流を突き詰めていくのも自分の世界を広げる手法としては良いのではないかと思います。
物語に関して言えば、最終的には童話や神話、心理学の話に行き着くのかもしれません。
なんか当たり前のことを書いてしまったけど……
書いてしまえば当たり前の内容だし、こんな内容の記事はどこにでもあるでしょうけど、一度自分で書きたかったので書いておきました。すっきり。