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No.823: 「時をかける少女」と生薬

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月別表示: 2007年04月の記事 カテゴリー: 未分類

投稿者 Lakililac 投稿日時 2007/04/20 18:00:00

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2007年04月20日の日記の概要

「時をかける少女」と生薬

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金曜日、5つ授業が入っている、大学に行く5日間の中ではそれなりに大変な、週の最後の日。そんなことはどうでも良くて、今日は「時をかける少女」のDVDの発売日のようですよ。今のところ買う予定は皆無ですが。


「時をかける少女」の原作は相当古くて、もう何十年も愛されてきた物語(筒井康隆のジュブナイルSF小説 (1967年刊))な訳ですが、昨年夏に公開されてこの度DVDになった映画は、その小説に描かれた時代の話ではなくて、そこから20年後が舞台になるようですね。原作の主人公・芳山和子の姪である紺野真琴がこの映画では主人公のようです。と言うことは、芳山和子も出てくるのかな?


Amazonの感想や方々での感想を読んだり聞いたりしていると、「時をかける少女」という作品があまりに評判が良かったので、まずは原作を読みたいと思い、先月、実家に帰る途中に西宮市の書店で買って読んでみたら、これが1960年代後半に書かれた作品とは思えない物語でした。


ラノベやアニメ、漫画と、これだけ既存の作品が蓄積した時代に育ったにもかかわらず、素直に楽しめました。尤も、登場人物の発言には、かなりの昭和臭さが見られました。具体的には、「~だもの。」とか感動詞「まぁ」みたいな、ドラえもんの漫画とかで見かけるような言い回しです。でも、まさしく昭和に書かれた小説なんだから、その点は仕方がないと思います。今から数十年後(西暦2030年ぐらいとか)の若者言葉を当てるのは至難の業なので。


「時をかける少女」(原作)を知らない人はこれ以降はネタバレを含むので要注意です。

「時をかける少女」は題名が示すようによくあるような時間移動を扱うSF小説です。しかし時間移動の方法はなかなか異色で、航時機を用いずに、薬品で時間跳躍をすると言う設定でした。そして、何より独創的なのが西暦2660年の薬学者がうっかり実験中に事故を起こして時間移動をしたことが物語の発端だということです。


普通、時間移動を盛り込むときに、適当に設定を考えようとすれば、怪しげな身なりの狂気の研究者(専門分野不明)とか、物理学者なんかが選ばれそうなものです。しかし、何故か「時かけ」の著者の筒井康隆は薬学研究者を登場させたのです。言われてみれば、大昔から「薬」といえば、不老不死とか色々妄想できるので、結構何でもありな印象があるから、SF小説では便利な道具だと思います。


題名で挙げた「生薬」っぽい話に戻ります。これでも薬学部の学生が書いている日記なので、たとえ想像上のものであっても、「薬」の話が出てくれば、多少は触れておきたいものです。


「土曜日の放課後の実験室」と言えば「ラベンダーの匂い」とか、「時かけ」読者ならニヤリ、往年の愛読者なら懐かしい「枕詞」ではないでしょうか。未来には存在すると言う薬品クロッカス・ジルヴィウスとシソ科のラベンダー【この小説が書かれた当時、日本ではまだlavenderは有名ではなかったらしい。】があれば時間移動できるみたいですよ。残念ながら現実には「クロッカス・ジルヴィウス」が存在しません。良く調べていませんが、たぶん何か植物の「学名」というわけではないみたいです。薬品だと説明されていたので。


先ほど、上のほうで「なぜ筒井康隆が西暦27世紀から20世紀への時間遡行者に『薬学研究者』という属性をつけたか分からない」と書きましたが、何となくなら分かります。つまり、未来にしか存在しないような合金だとか、高度な技術を使った時間移動の手段だと、未来から来た時間遡行者が物語の最後に自分の未来に帰っていくという展開と、現代の少女が急に時間跳躍の能力に目覚めるという状況が両立できないからです。その点、薬の場合、まず前提として時間移動の仕組みが薬品だという多少強引な「嘘」を読者に納得させることが出来れば、あとは簡単です。


第一に、未来人に効果がある「薬」は過去の人にも恐らく効くことでしょう。600年といえば長い印象を受けますが、1世代30年として、20世代ほどの未来です。それほど大きな性質の変化が人体に起こるとは思えません。

第二に、「薬」だと合成または調製に必要な材料が比較的手に入りやすいはずです。上と同じ理由で、高々600年で、現在使われている「生薬(しょうやく)」が地上から消えるという可能性は少ない気がします。しかも、未来に現存する植物なら、ほぼ確実に600年前にもあるはずです。「クロッカス・ジルヴィウス」の材料が何なのかは不明だけど、サフランに関係してそうです。。。


以上、「主人公が無意識に能力を使えるようになること」と「未来人が元の未来に帰還できること」の二つが物語の都合でどうしても必要だったから、時間移動の手段が「薬」だったと考えられます。


と言うわけで、もう40年も前のSF小説について薬学生の薬贔屓目で熱く考察してみました。そして、この物語の続編のDVDが本日発売されました。ついでながら、Wikipediaによれば、その「続編」は監督は細田守。キャラクターデザインは「新世紀エヴァンゲリオン」も手がけた貞本義行が担当。とあって、最初から上手く行くような安心して薦められる作品に仕上がることは分かっていたような企画ですね。何より、原作者の筒井康隆が「正当な続編」だと評価しているのが喜ばしいことです。。。


以下、Wikipediaに記載されているアニメ映画版(続編)のあらすじを引用しました。

時をかける少女(2006年、アニメ映画)

東京の下町にある高校に通う女子高生紺野真琴は、ある日踏切事故にあったのをきっかけに時間を過去に遡ってやり直せるタイムリープ(時間跳躍)能力に目覚めてしまう。


最初は戸惑いつつも、遅刻を回避したり、テスト問題を事前に知って満点を取ったりと奔放に自分の能力を使う真琴。そんなある日、仲の良い2人の男友達との関係に微妙な変化が訪れ……

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